南町三丁目商店街振興組合
特集 竹脇元治 「旧市街地・中心商店街・再生への道」 P14
≪34≫音楽で街の楽しさを増す小樽 平成13年10月14日
米国・同時多発テロの影 先週末、以前より毎年楽しみにしている乗馬クラブの仲間6人と旅に出かけた。今年は「道産子に乗って草原を歩く」のが目的の旅だった。羽田空港では機内持込荷物のチェックも厳しく、預ける荷物も中身を見せるように指示もあった。少し早めに着いていた私たちもしっかりチェックをされるため、30分遅れでの離陸だった。航空機テロの影響そのものだ。 北海道千歳空港近く、恵庭自衛隊駐屯地隣に広大な敷地を所有する〈道産子のみ)の乗馬クラブ主は、農業より多少なり収入の多い乗馬の方に転向して、農地は牧草地に転用したとのことだ。冬場でもこの辺の積雪は1b程度なので空港近く(車で40分くらい)の立地もあり、雪中乗馬も楽しめるので、年間を通じてこの地を訪ねる人人々がいるという。 スキップをするような道産子の走り方を初体験し、楽しい思い出になった。ただ、インストラクターの後について千歳川の側道や、札幌への高速道路ガード下をくぐったりしている時「ドドーン、ドドーン」と大砲のような音が聞こえてくる。聞けば、最近は気合の入った自衛隊の訓練が連日続いているそうで、戦車からの発砲音だという。馬は音に敏感で普通バタバタするくらいの音なのだが、ここの道産子は、私のカメラにはピクピクと反応していたが大砲音には慣れのせいか平然としている。今日は空砲だが、実弾の時は地響きがして空気が震えるそうだ。そして翌日のニュースで米軍のアフガニスタンへの空爆を知った。 これでまた、海外旅行も減るだろう(南町の年末セールでも特賞の海外旅行は消えた)国内旅行も航空便利用が減り、当然消費も一段と冷え込み、零細商店はさらにきびしさが増すのだろう。そして狂牛病問題も追い討ちをかけている。 私の乗った馬は草原でひざを折り曲げ、がっくりとこけたが、オーストラリア製のカーボーイ用の鞍が落馬を救ってくれた。商売もそうあってほしいものだ。 マイカル小樽の破たん 私が以前研修で小樽を訪ねてころ、ちょうど北海道を代表する巨大複合商業施設「マイカル小樽」の出店で騒いでいた。完成後の評判はすごく、道外のマスコミも大々的に取り上げこれからの商業の方向性を示すものだとの評価も高かった。 地元市民の声を聞くかぎりでは、結構人も入っているし、「まさか」との気分らしい。観光客でごった返す石原裕次郎記念館に隣接するこの巨大施設は巨額の負債たあり、破産後に建物を安く売り出し、新しい支援企業の元での再出発の可能性を探っている見方もあるようだ。巨大さゆえに回復の苦痛も多い。内原ジャスコの出店計画と重複するイメージもあり、行政のインフラ整備の投資金もムダ金になってしまうことも考えさせられる。 古い街並の中で新しい街を作る 小樽の街は古い建築物をライトアップした草分け的な存在でもあり、たかだか300m足らずの港近くに残った運河を利用しての観光資産を作り、食文化の寿司屋通り、北一ガラスの目玉作りも効果的だ。(このガラスで街の再生を目指した街が全国にある)以前に訪問したころから比べると運河周辺に店が増していた。オルゴール・ステンドグラス・おもしろ人形・米国ガラクタ屋等の若者向けの店も多くなっていた。街角にカナダのバンクーバーにある旧市街地の再生で作りあげた「発生の地・ギヤスタウン」のシンボル『蒸気で時刻を知らせる時計』のそっくりさんが建っていた。足元にはやはりその旨の標示板があった。 そんな中でビールを飲みに立ち寄ったレストランでは「カザフサタンのサーカスのピエロやベリーダンスのダンサー・地元のバンドの混合にパントマイマーを加えてのショー」を見られた。商店街を歩いてみると、ジャズバンドの路上ライブも開かれており「おや?」と思い、係員らしき人に尋ねてみると、3年前から始めていた「音座なまらいぶ小樽」の偶然その日に当たっていたのだ。 やっぱりいた仕掛人 年に1度のこの企画を、電話とインターネットで取材をしてみると、今年は72バンド・275人の参加者があり10月7日に十ヶ所の会場でのライブの聞ける日だった。そして市内で1軒だけのジャズ喫茶のオーナー神田泰行氏が仕掛け人の代表で芯になっていた。音樂は人々の心に活力とワクワクする楽しさを与えてくれる。夕食後、山の上で夜景を見、もう一度運河に戻ってみたが人通りは絶えていなかった。そして音樂も流れていた。 このグループは小樽の単に観光化だけの方向や、量的なものだけに走る今の世の中に反発するようにして始められた。この企画は、アマ・プロ・ジャンルも問わない。それゆえにジャズからクラシック・民謡等の広い分野からの申込があり、互いに刺激をうけられ、客にも一体感が生まれ、新しい街の魅力に育ちつつあるらしい。 |
前例のない地域連携企画 この事業は平成13年度より始まった水戸TMO(商工会議所が調整役)が南町全地区(東西に七百メートル)の活性化のため、9月より10月までの間、実験的といってもいい、決して多くない予算の中に収めるように努力をしなければならない企画だった。 エコステーション(空カン回収機)の2台設置と景品(各商店の協賛品も含む)の用意しながら環境問題を提言をしていく街を考えてみた。同時期に日本女性会議の水戸開催と、近代美術館での「イタリア彫刻展」が重なっていた為、歓迎フラッグの取り付け程度の思いから、いつしか、美術館や大学を巻き込んでの企画へと展開していったのには、近代美術館主任・山本哲士氏の尽力に負う所が多い。 南町連合商店会は、15年前よりイタリア・ボローニアの中心街区との友好関係を結んでいたため、イタリアフェアーは即決だった。ただ肉付けとして近代美術館の彫刻展ポスターを街中にあふれさせる程度は考えていた。山本氏はそれ以上に学生との連携を提案し、企画の段階からの参加を求めた。茨城大学の島田先生の協力を得、フラックとポスターのデザインから取り組んでもらった。 そして私の知人の常磐大学・塚原先生を紹介すると、山本氏は早速イベント企画の協力の了解を受けたとの話を持ってきてくれた。 エコステーションの景品の1つに、近代美術館の入場招待券の協賛の申し出てくれた。かつて映画・演劇・音楽会等の招待企画は幾度もやっているが、美術館への招待は初めての事だ。 学生が考えたイベント企画 9月22、23日のイベント集中日の企画は、学生たちの計画を基に自分たちだけで実行してもらっている。(商店街企画については商店街が運営実行) 常磐大学の「ピノキオの大冒険」は、南町地区3ヶ所に設置された高さ2メートルの巨大絵本にヒントがかくされているクイズを、なぞ解きしながら歩いてもらうゲームだ。イタリアを大枠でイメージさせる「ピノッキオ」等、若者らしい発想に新鮮さを感じる企画った。 そしてその巨大絵本の側には「トレビの泉」を再現してみたり、巨大な「ガラポン抽選機」(テニスボールくらいの抽選玉がゴロゴロなりながら回転する)でのゲームをピノッキオの扮装したお姉さんが走り回って盛り上げてくれたりもした。 9月22日は小学校の運動会の開催日に重ったり、23日はお彼岸の日だったりしたためか予想より参加者が少ない気がしていたが、南町二丁目企画の「ビバ!イタリア」でのビンゴゲームや野菜・果物の即売会や、花の苗プレゼントは、それなりのにぎやかさを増してくれた。 予想外・小さな企画の大人気 一連の事業を実施していった中で意外な人気だったのが9月22日の茨城大学美術科の学生さんたちによる「ヴェニスのマスケラ仮面作りと、ちょっとオフザケのフェイス・ペインティングだった。自分だけのオリジナル仮面が出来たり、顔に直接ペイントしてもらう姿は、サッカーのサポーター的な気分で変身できるように楽しんでいた。 9月23日の南町三丁目での「あなたもアニメの主役」という、「アニメ・ポートレートを描きますよ!」と、通行人に呼びかけ、背景を「ちょっとイタリア旅行に行った気分」で似顔絵をセル画に仕上げる楽しいものを、茨城大学のイラストサークル忘我堂の皆さんに企画してもらった。これも好評だった。 この二つの企画は「描いてもらう人・それを見てる人」それぞれ長い滞留時間で存在しており、街中に小さな「よどみ」を作り出していた。他の企画は次回で紹介するが、これが紙上に掲載される頃、最後のイベント「ハロウィーン」が10月28日開催される。 |
TMOの特性を考えれば 「水戸TMO」の初の事業であった今回の企画は前提としての調査を終えてから始まっている。 駅から大工町まで(21地区)の中心街区でのアンケートは「組織強化・販売促進・方向性・人にやさしい街・空き店舗・裏通り・横通り・回遊性・交通環境」等々、コンサルタントより各項目で具体的な事例を65種ほど記したものだったが、全地区で10項目を共通で必要との返答があった。 日頃、定期的に会合を持ち各種事業の展開をしている街区にとっては、うんざりするほど同様の質問を各種団体より受けて来たため、当然のごとく抵抗感を感じないが、何事かが起きた時期にだけ集会を開いている街区にすれば『街について考える』よい動機になった。 私はこのTMOの策定委員会が始まる時から「報告書作りのためであるなら取り止めにすべき」と言っていた。TMOでなければ出来ないこと、つまり国・県・市等の行政や警察を抱き込まなければ出来ないような事に対応すべきで、単なるイベントや、コンサルタント主導型の研究会等は不必要と伝えたつもりだった。 必要に応じて専門家の協力をもらうべきだが、目的が明確になるまでは自分たちで考え、方向が決まり具体案が出たところで相談すべきだ。 マスコミの注目度 南町連合商店街では「エコステーション」(空カン回収機)と「イタリアフェアー」を中心に9月から10月の間、TMO構想事業が展開された。予想以上にいりいろな方との出会いや、新鮮な発見があったが、もう一歩踏み込んで(検討期間が短期であったゆえに大規模な事業は無理だったが)、国道に「ワンコインパーキングメーター」や歩道に「パラソルとベンチの設置を正式に認可してもらう」程度のものは対応すべきだったと心残りがある。 ただ今回の各種イベントや企画に対応するマスコミの反応は「TMOの企画と各種団体の連携」ゆえに注目され、茨城・新いばらき新聞では十数回ずつ、読売・朝日・毎日・サンケイ・日経・東京等でも取材記事を数回ずつ掲載してもらえた。テレビはNHK・フジ等にも取り上げられ、こんなにもたくさんのマスコミを通しての事前予告広報活動は例の無いものだった。イベント当日も茨城放送のサテライトカーを中心に10分前後の枠を数回取ってもらい実況中継をしてもらえた。これらを単なる広告として換算すると2千万円を越えるものになったとの話もある。 大学が授業としてとらえてくれた 茨城大学では、今回のイタリアフェア等に関して、島田先生の美術専攻学生の皆さんには授業の1部として参加してもらえた。デザイン企画や南町三丁目のハーモニーホールでの「イタリアデザイン展」など楽しみながらも授業であるため真摯(しんし)な姿で取り組んでもらえた。小泉先生グループの学生たちには個店のウインドウディスプレーを数軒してもらっている。オープニングセレモニーには学部長にも来場していただいたり、フラックのデザイン担当の学生と、ピノッキオに扮した学生もテープカットに参加してもらい華やかさを増すことが出来た。 南町一丁目ではイタリア食材のプレゼント・四丁目ではティスモ社の協賛でイタリア車のフィアット&アルファロメオの展示もあった。日本女性会議開催の夜は泉町の「宴や夜市」に連動して南町も夜9時まで店を開いけ、バンドの路上ライブも南町三丁目で開催した。女性会議参加の方に「いつもこんなに楽しい夜も開いている町なのですか?」との質問も受けた。各店PRのチラシをまき、巨大ポスターや各店サービス品ポスターも作り店頭に張ってもらった。 10月28日のハロウィーン(南町三丁目)は雨が降ってしまったが400人の子供達がコスプレ衣装で街を歩き回り、常磐大学塚原教室の学生にもう一度協力してもらった。人気抜群の馬マスクのお兄さんたちが盛り上げてくれた。若者の企画参加は街に新風を吹き込み、明るさを与えてくれたのが最大の成果だった |